肉体の悪魔:映画

gladson2009-02-08



夭折の天才、レイモン・ラディゲによる不朽の名作の映像化である(1947年仏、モノクロ)。よってあまり期待せずに観たのだが、そのせいかこれが意外にも良かったので驚いた。しかし原作のウリが精緻を極める心理描写で、映像で再現すべく果敢にもチャレンジしていたフシがあるが、やはり限界があるということもよくわかった。

ジェラール・フィリップはとても美しく演技も上手いのだが、いかんせん16歳というには微妙である。それでも駄々をこねたりするシーンで、一瞬子供のように見えるのは、流石と言うべきか、やはり問題なのか。私としては、もう少し陰気で怜悧なガキの方が良かったと思う。

それでも作品のメインテーマである、戦時中という特殊な状況とか、若さゆえの過ちといった部分は、映像やストーリーのあちこちに巧妙に織り込まれている。
レストランで「ワインにコルク臭がする」と、ソムリエにクレームをつけるシーンが微笑ましい。

しかし16歳のガキが目の前でこんなこと言い出したら、フツーはワインの瓶でぶん殴るだろうな。

まあ恋愛映画という括りで捉えれば、主役の二人もいいし、メロウな雰囲気を充分堪能できる。原作のファンでも、観ておいて損はないであろう。