減反政策の見直し

gladson2009-02-07



 コメの作付面積を制限し、価格を維持してきた生産調整(減反)の見直しをめぐる議論が活発になっている。石破茂農林水産相減反に参加するかどうかを各農家に委ねる「選択制」を検討する意向を示したからだ。

 選択制では減反に参加しない農家は自由にコメを生産できるようになる。その半面、コメの価格が下がっても国からの補助金はない。これに対して減反に参加する農家は生産量について制約を受けるが、政府から直接、所得補償が得られるという。
 減反は昭和45年に始まった制度ですでに39年がたつ。平成7年に国による価格統制を定めた食糧管理法が廃止された以後も、米価下落を抑制するためとして継続されてきた。制度維持のために使った支出は累計で7兆円に上る。

 その間に日本の農業はどうなったか。長年高い米価が維持されたため、高コストで生産している零細な兼業農家が生産の中心になってきた。そのため、農地が専業農家に集約されず、生産効率が低いまま、農業改善が図られなかった。また、後継者が育たないまま、生産者の高齢化も進んだ。農地は放棄され、いまでは耕作放棄地が東京都の1・8倍の39万ヘクタールにも達している。
 
このままでは日本の農業は展望を見いだせないまま、衰退する一方である。石破農水相の示す減反選択制は、農家のコメ作りの自由度を高め、農業を活性化する一つのステップになり得るだろう。

 ただ、減反に参加しない農家は意欲的な専業農家である可能性が高い。日本の農業にとってはそうした農家の育成が重要である。これらの農家に対しては、所得補償がない代わりに農地法を見直して農地の集約をしやすくするなどの規制緩和を進めることが必要だ。減反の生産目標や所得補償の額をどのレベルに設定するかなど今後詰めるべき課題も多い。

 そうした問題を解決するには、農水相の提案を単なる減反をめぐる議論にとどめてはなるまい。将来を見据え、日本の食料確保をどうするかという大きな構想作りの中で議論する必要がある。

 日本の農政は、全体の展望がないまま場当たり的な政策が繰り返されてきた。制度疲労を起こしている農政をこのまま放置していいはずはない。減反見直しを農業全体を改革するきっかけとして議論を深めていきたい。