世界的金融危機の遠因

サブプライム・ローンに端を発した現在の世界的金融危機にもよい面がある。投機資金が引き揚げられたせいか、原油穀物(大豆、小麦、トウモロコシ)の先物価格が今年初めの価格を下回るようになった。


現在進行中の金融危機アメリカ発なのであるが、その遠因について、今朝の朝日新聞に、小林陽太郎富士ゼロックス相談役の興味あるインタビュー記事が載っていた。忘れないように以下にメモしておくことにした。

「80年代に米国の産業競争力を高めようと議論したヤング委員会の指摘は、製造業の品質向上などを通じた企業の活性化とともに、金融の自由化を進めるという市場原理主義の徹底だった。当時、投資銀行の経営陣から今の米国を動かしているのは『フィア』(恐怖感と『グリード』(貪欲さ)だと聞いた)

「米国には日本やアジアにやられて、衰退してしまうという恐怖感があった。それを克服するために、手段を選ばず貪欲に稼ぐことが、米国経済を引っ張り上げる最善の道だと信じられていた。少しぐらい『おかしいぞ』と思っても、ウオール街主導で勢いがつき始めた米国経済に、経済界の中にいる人たちが水をかけるわけにいかないという思いが勝ったのだろう」

「・・・個人がたくさんの借金をしても、住宅や車を買い、企業が売上げを増やし、成長すれば国全体として得なんだ、と知った。成長を期待し、借金をすることが経済の新しい地平を開くと考えることも、米国精神の反映だったのかもしれない。」

新自由主義的な考え方にある程度は反省したり、揺り戻しがあったりするとは思う。・・・ただ日本では株主利益を最優先する考え方にやや疑問が出たりしているが、米国では政府、産業界、ビジネススクールなどで日本のレベルほどの議論はまだない」

「『資本主義社会で格差があるのは当たり前』という意見を経済人が話すようになったが、これはおかしい。ここ十数年の間に、成長のために『格差』を甘んじて許してきたきらいがある。『差』があるのは仕方ないが、『格差』は一定の範囲を超えて、構造的に起きている差だから、是正をしなければならない」


成程、今回の金融恐慌の遠い遠い原因は、日本にあったのだ。そして内需拡大規制緩和などを米国に強要されて、挙句の果て世界一の借金大国にのしあがってしまったのである。