地方格差は解決できるか

午後、近所の理髪店へ行き、ヘアカットしてもらう。行き、帰りが暑かった。夕方涼しくなったので、芝刈りを始めたら、間もなくモータが止まり、白煙がでてきたので、虎刈りのまま中止した。


地方格差というか、地方の疲弊はひどいと言われている。だが、この10年以上地方に旅行をしたことのない私には実感がない。僅かに週刊誌などによって、その片鱗を覗うのみである。地方でも工場のある所はまあまあのようである。

秋田県に工場があるかどうかは知らないが、この県は雇用がないそうだ。それで、県は20人以上雇ったコールセンター(CC)へ、1人当り年に25万円の補助金を出すことにしたという。東京なら時給1300円前後払わなければならないが、ここは安い、秋田県最低賃金は617円だという。お蔭でコールセンターの雇用が増えたが、最低賃金ギリギリの給与。

秋田の大学を出た、両親と同居する24歳のA子さんは、秋田市近くにある某大手精密機械会社のCCの契約社員で、月収15万円から税金などを引かれ、手取り12〜13万円のそうだ。しかも車がないと通勤できない。A子さんはいう。
「秋田には親にパラサイトせずに済む会社は、電力、銀行、県庁、市役所以外にありません。この県では、春になると人口が減ります。高校、短大、大学新卒者がみな、県外へ就職するからです。就職先であるのは、CCの契約社員だけ。」

おそらく、他の県も似たりよったりだろう。これで最低賃金民主党がいうように1000円に上がったら、CCは一斉に、中国の大連などに移ってしまうであろう。そして地方の疲弊は益々激しくなる。グローバル化時代を向えて、日本の地方はどうにもしようがない矛盾の中に追い詰められている。地方を取るか、中国をとるか、どちらが経営上有利かの経営判断で。中国を取るということは、ある意味で、中国の土地と人を平和裡に取るということで、昔の中国侵略と似たものになり易く、気をつけないと恐ろしいことになるだろう。

よい解決法はないものかと思って、「中央公論:9月号」をばらばらめくっていたら、リクルートの創業者である江副浩正氏は「アメリカでもニューヨークと地方とでは歴然とした格差がある。農業国のフランスもパリと地方との格差は大きい」と仰せられる。そして「地方には地方の良さがある。地方で慎ましく暮らす道を探すのがよいのでないか」みたいなことも言う。これは、余裕のある年寄り向けの話であって、将来に向って夢を抱く若者には何の解決法にもならない。

国税庁長官の大竹健一郎氏は、次のように難しいことを提言されている。「(略)東京一極集中の活用が不可欠である。東京という世界の主要国際都市に集まる資金や経済力を存分に発展させ、税収として吸収し、それを地方の中核都市改造やボランティアへの財政上の手当てなどに活用する。(略)グローバル化の恩恵も東京などのごく一部地域に限られる。したがって偏在性がますます高まっていく税収、特に各企業が海外で稼いできた収益にかかる地方法人税、さらにいえば法人事業税は各地方自治体の共有税として各県の面積に応じて配分するくらいの財政調整が求められる。ただ単に税収を国から地方へ税源移譲することでは全然解決しない。(略)」
要するにグローバル化の恩恵を受けた東京などの税収を、各県の面積に応じて配分したらどうか、ということのようである。経済音痴で、しかも批判力が弱い私は、法人事業税の意味もよく分からずに、“ああ、そうか!”と直ぐに賛成してしまう。
石原都知事は真っ赤になって怒り、反対するだろうが、この程度の荒料理をしなければならない程、グローバル化による地方格差は広がっているのだろう。