朝日新聞夕刊「素粒子」

今夕、台風が関東地方に上陸するという。湿った生温かい風が気持ち悪い。


朝日新聞夕刊一面右上の社名と天気予報の間に「素粒子」という、エスプリと駄じゃれの利いた短いコラムが連載されている。例えば、昨日は末尾に、『昭和の参謀(瀬島龍三)大往生。「あいつらの言う国家とは、結局、てめえらのことではないか」「何万人もの兵士が餓死しても、すべて、国のためだと言って、平気なのだ」(古山高麗雄・フーコン戦記)』という短文が載っていた。


私は、毎日拙いブログを書く上で、今日は何をテーマに書こうかと、材料に苦労している。素粒子の作者は、これで生計を立てているのだから、その苦労は私の比ではないだろうと、それとも、プロなのだから簡単にこなしているのではないかと想像したりもする。現在の素粒子の作者が誰かは知らない。


偶々、斉藤信也さんの「記者生活40年」という、著者の一代記みたいな文庫本を読んでいたら、昭和52年8月末(約30年前)まで19年間、論説委員だった著者が毎日「素粒子」を書き続けたと出ていた。プロでもやはり材料に困っていたらしい。


最後に近い頃(64歳で退社)は、自宅で書いて電話送稿したそうだ。新聞を5紙取って、朝4時半から8時半まで、お茶がぶがぶ、煙草ぷかぷか、タネはいずや、タネはいずこと、読み漁ったという。ある時、悪友と呑んでいたら、「お前は、谷崎潤一郎より原稿料が高いんだぞ、毎日たった15行で高給を食(は)んでやがる」とからまれたそうだ。

この本の中に、斉藤さんの「素粒子」の代表作めいたものが引用されている。そういちゃ悪いが、現在の「素粒子」の方が、ずーっと面白い。