心とは何か?

台風4号は当地をかすめ通っただけで、何ごともなく過ぎた。

7月13日にNHK総合放映の「ニッポンの教養:哲学ということーー哲学」を録画で視た。

爆笑問題が、野矢茂樹東大教授(専門は分析哲学)をキャンパスに訪ねて“心って何か?”という、一見分かりきったことについて熱心に討議していた。深く考えてみると分からない。例によって、太田と田中がぐちゃぐちゃ言っていたが、満足な答えが出てきない。教授は‘心でないもの’との対比で考えよとサジェションする。心とは“言葉で答えられないもの“まで進む。さらに教授は、「ここに蛇が1匹居るとする。この蛇の色が白い、黒いは蛇の属性である。この蛇をみて、怖いと思うか、可愛いと思うかは、心に属する」までヒントを与える。最後に教授は「心とは‘その他のもの’である。共通で認識されたもの以外のもの」と、分かったような、分からないような解を出した。
そして自分と異なる考えとの出会いによって大人になる。他人の心は、言葉や振る舞いの束であるとも言う。結局明瞭な“心”の定義は出なかった。

哲学の授業は、これでよいのだろう。先生と学生が、常識みたいなことについて、「ああでもない、こうでもない」と一見無駄な議論をすることによって学生の思考力が磨かれるのだろう。成長期にこのような先生について磨かれた学生は仕合わせであると思う。

最後に3人はキャンパスの隅にある三昧堂という、一高時代からある古い禅堂に入って座禅を暫く組んだ。教授は「座禅は言葉を断ち切る世界だ」という。「心は言葉で言い表わせない」と、最後に伝えたいのだろう。


70年ほど前に建てられたと思われる三昧堂が、未だに朽ちずに立派に残っているのが不思議である。一高時代に“陵禅会”といって、会員10名ぐらいの小さい人気のない同好会があって、この会員が座禅を三昧堂で行っていたようである。今思えば、当局は将来のエリートのために贅沢な施設を用意したものである。或いは座禅は国策である日本精神の涵養に役立つと考えてだろうか。