赤外線天文衛星「あかり」 続き

「あかり」の軌道は、高度約700キロメートルの“太陽同期・極軌道”である。地球の夜側と昼側の境界あたりを北極と南極を結ぶように地球をタテに回る。
「あかり」が観測する星からの赤外線は、二酸化炭素などの温室効果ガスに吸収されて、地球では殆ど見えない20〜300ミクロンの波長のものである。この赤外線で銀河外の銀河にある地球のような惑星を観測する予定。
技術的に難しかった点の第一は「冷却」。赤外線望遠鏡が、太陽光を浴びて温まる望遠鏡自体が出す赤外線をいかに抑えるかが最大の課題だった。望遠鏡は、主鏡の有効径が68.5cm、焦点距離が4.2m、全体の高さが約3.7mとかなり大きい。
対策として、マイナス269℃のヘリウムを使って望遠鏡全体を冷やす特殊な冷却装置を搭載している。この装置では、ヘリウム・タンクの液漏れを防ぐために、タンクの栓にポーラス・プラグという素焼きの材料を使っている。

反射望遠鏡の主鏡には、軽くするためにガラスでなく、炭化ケイソのセラミックを採用した。鏡を支える部品であるアルミニウム合金と炭化ケイソの熱膨張率が違うので、その影響で反射鏡が歪まないようにするため、両者の間に「インバー」を挟みこんで、両者の間の収縮の差を吸収するようにした。

センサーには、ゲルマニウムガリウム系の半導体を用いている。

以上は、「週刊ポスト:6.15、6.22、6.29」に連載された、『メタルカラーに時代:山根一真氏と宇宙航空研究開発機構の村上浩氏の対談』からの要点でした。宇宙開発は、先端技術の塊であることがよく分かった。従って、一見無駄のようだが、宇宙開発を続けることによって、国の技術水準が向上する。