木炭釜炊飯器

我が家は夫婦二人の生活。ご飯は夕食の際に炊くのみで、二人とも小食のせいか、僅か一合しか炊かない。そのせいか炊き上がったご飯が旨くない。旨くないから、益々食べるご飯の量が少なくなるという、いたちごっこが続く。5号炊きの炊飯器で一合を美味しく炊くのは無理なのだろうか。
一合でも美味しく炊ける炊飯器を探しに、4月ごろ家内と一緒に、近くの電気製品量販店へ行った。多くのメーカの製品がずらりと並んでいたが、どれも似たりよったりで、今使っているものと変りばえしない。
ふと片隅に、三菱電機製の「木炭釜」という変った表示の炊飯器がひっそりと陳列されているのを見つけた。簡単な効能書きを読むと、「内釜に炭素を使った画期的な炊飯器で、ご飯が従来になく美味しく炊けます」とある。「これだ!」と思って値札を見ると、何と9万円と高いのにはびっくりした。家内に云っても「勿体ないと」、どうせ反対されるだろうと思って、黙って見過ごして何も買わずに帰った。


偶々「週刊ポスト:6.15」をバラバラめくっていたら、「我が社の『鈍感力社員』が創ったヒット商品21開発秘話」という見出しの記事があった。最近、家内の胃潰瘍で、“鈍感力“に敏感になっているので、固そうな記事だが読んでみることにした。何と驚いたことに、冒頭に三菱電機の「木炭釜」が出ているではないか。

製品化に2年を要したそうだ。問題は純度99.9%の炭素素材をつかった内釜。炭素素材を使えば、釜自体が一気に発熱し、ふっくらと炊きあがることは基礎研究でも判明していたのだが、3つの問題点があった。(イ)内釜が割れやすいい、(ロ)量産性に欠ける、(ハ)価格が高い、だ。

三菱電機ホーム機器の課長代理赤石都良氏が語る。
「割れやすいという欠点はコーティングなどでクリアできました。でも、量産できない、高いという欠点は抱えたまま。それでも売りたかった。試作品で炊いたご飯を自分で食べて、何て旨いんだ!と思ったからです。反対する幹部もいましたが、ヘコたれませんでした。絶対消費者に喜ばれると信じていましたから(笑い)・・・・」
発売11ヶ月で2万台を突破したそうだ。本物のようである。


退院した家内にこの炊飯器を買うことを、どのようにして説得するかを、目下思案中である。