日本の未成熟な民主主義

参議院選の足音が近づいてきた。憲法改悪に一歩近づくか、または遠ざかるか、今後の日本の将来を決める天下分け目の大事な選挙である。

総選挙については、40年位前の古い昔のことではあるが、忘れることができない嫌な思い出がある。
当時私は勤務先の山口県にある工場で働いていた。昼食は、部課長会食といって、工場長を中心にして部課長が一室に集まって食事をするのが慣例だった。その際に、重要な連絡事項が伝えられる。

総選挙(当時は中選挙区制)が迫ったある日、総務部長兼工場次長が「今回の総選挙で当社は、自民党の○○候補者を応援すると本社から通達があった。それで皆さんにお願いがある。部下でも近所の知り合いでもよいが、少なくとも5人に自民党の○○候補者に投票するように頼んで、了承を得た人の名前を記入した紙を総務部長に提出して欲しい」と言った。それを聞いた時は、「民主主義はどうなっているんだ」と頭にきたが、サラリーマンは辛いよ!で、黙っていた。

何もしない訳にはいかないので、やむをえず、心安い部下5人に「こういう訳だから名前を貸して下さい。投票は自由にして下さい。どうせ誰が誰を投票したかは分かりやしないから」と言って名前を借りて、その5人の姓名を書いた紙切れを提出した。良心に恥じる行為だった。

それがきっかけの一部で、何時でも会社を辞められる準備をしようと決心した。それの安全パイは資格を取ることだと考え、会社にこっそりと猛勉強をして、弁理士試験に挑んだところ、運よく一回で合格した。その後の私は、何時でも退社してよいという覚悟だったが、ボスが変り者で、中々離さず、結局、定年(当時は55歳)まで居ることになってしまった。

合格後に弁理士登録して日本弁理士会員になった。しかしそこは、政界に劣らず、派閥が横行している魑魅魍魎の世界なのに驚いたものだ。派閥は大体出身大学別にある。弁理士会長や役員は、任期一年であるが、各派閥から交互に推薦によって無選挙で出るしきたりになっている。しかし稀にこの旧習を破ろうとして立候補する勇者が出ると、大変だ。あちこちからの電話攻勢が凄い。どの世界も同じなのだな!と感じたものである。

退職後、1人特許事務所を持ったが、その得意先の担当者K氏が創価学会員だった。選挙になると、自宅まで押しかけてきて、公明党候補者に投票するように頼まれた。当時は、公明党は野党だったから快く応じた。選挙が終わった後には、必ず葉書または電話で礼の挨拶があるのには感心したものだ。

5〜6年前に、弁理士登録を抹消して、一切の仕事から解放され、悠々自適の身になった。しかしその後も、K氏から選挙の度にお願いが来る。その頃は公明党は与党になっていた。それで「私は若い時から反自民で、野党に投票をしてきた。それで公明党が野党の時は、貴方に従ったが、今は与党になっているので、自分が好ましいと思う政党の候補者に投票することにしました。もう無駄だから、来ないで下さい。」と、はっきり言った。それでも電話を掛けてくる。しつこい。無駄だよ!!絶対に公明党には入れないぞ。