世界の鉄鋼業

鎌倉淡青会の定例昼食会に今年初めて出た。冬の間は寒かったのと、スピーチのテーマに興味が余り湧かなかったので、欠席した。

今日は、昨日までの寒の戻りが和らいだ穏やかな春日和の中、緑に萌える鎌倉山の風景を楽しみながら、バスで駅前に行き、直ぐ近くの井上蒲鉾店3階の会場で、写真のような緑を眺めながら、新日鉄OB(S28経卒)の坂元節夫氏の「世界鉄鋼業における統合再編状況」というテーマでのスピーチを聞いた。

鉄鋼業の将来については、サラリーマン時代に約30年間、この業界に居たので大いに関心がある。A4紙約50枚の統計資料を配っての1時間30分にわたる説明なので、全部をここに述べることはできない。特に印象に残った点のみを記すことにする。

アメリカの鉄鋼業がおかしくなったのは、製鉄所が内陸部にあり、輸送の便利な臨海部に移転しようとすると、従業員がそれなら会社を辞めると言うので、移転が思うようにできなかったせいらしい。欧州でも似たような事情があるらしい。


世界の粗鋼消費量は1970年以後ほぼ横ばいだったが、中国の消費量が、特に1995年頃から急速に伸びて、今では世界の約3分の1を占めるようになった。それに応じて生産量も急速に増加した。しかし中国の製鉄所は、中小規模で内陸にあるものが多く、その上エネルギー効率、環境保護、水資源など多くの問題点を抱えている。

鉄鋼業会で、この10数年間に国際的な業界再編・統合が進展した。しかし今の所、統合の結果世界第一となったミッタル・アルセロールの1人当たり粗鋼生産量は、300トンで、日本や韓国のメーカの6分の1程度であって、さほど脅威ではない。問題は敵対的企業買収をしかけられるか、どうかにある。逆にこちらが買収することも考えられるが、損すると分かっている所に、金を貸す馬鹿がいないので難しいらしい。

最後の質疑で、鉄鋼業は装置産業であるから、日本でも半導体産業のようにならないか、という疑問が呈されたが、はっきりとした答えは誰も分からないであろう。