遺伝子の話

数年前に、私が通院している山崎の徳州会系病院で、東大医科学研究所が主導する国家プロジェクトである、オーダメイド医療またはゲノム創薬(詳しい内容の説明はあったが、充分には理解できず、忘れた)に協力して欲しいと言われた。こんな老体でも今後の医療にお役に立てばと思ってyesと返事したら、1階の待合室に隣接して新しく設けられたゲノム室に呼ばれた。ここで、親の死因や兄弟が健在かとか、過去の病歴などをアンケートされた後、誓約書みたいなものにサインしてから、血液を採取された。このための血液採取は、これきりかと思ったが、毎年1回引き続いて行われている。

このオーダメイド医療については、当時新聞でも大きく取り上げられたので、その内容についてはうすうす分かっていた。しかしそれ以来、私の知る限り成果についての報道を見たことも聞いたこともない。
結果が出るにはある程度の期間が必要なのかもしれない。

その後の色々の情報を総合すると、長生きするか、どうかに、遺伝と生活習慣が大きく、それぞれ3分の1程度の割合で影響することに確信を持てるようになった。ということで、遺伝子には興味をもっている。


昨日テレビの番組表をみたら、日テレの「ザ!世界仰天ニュース:遺伝子」というのに目が行った。早速録画して先ほど視たところである。以下すべて米国での話しらしい。

1.スキルス胃癌のDNAは“CDH1“のそうだ。今まで元気だったある中年男が急に痛みだしたので、入院したら手遅れのスキルス胃癌で間もなく死亡したそうだ。彼の母も同じ病気で亡くなっていたので、念のために彼の子供とその従兄妹たち約20人のDNA検査をしたら、9人に遺伝子“CDH1“が見つかったので、彼らは恐怖のどん底に陥ったそうである。それで9人の内1人が医者のアドバイスに従って、胃の全摘出をおこなった。やがて残りの8人も全摘を行ったところ、その内数人の摘出された胃に、初期スキルス胃癌が発見されたそうだ。


2.ある赤ちゃんA子が網膜芽細胞腫(目の中の癌)に罹ったが、化学療法で治り、無事成長して結婚した。ところが1人息子が同じ癌に罹っていることが発見され、これも初期治療で治ったそうだ。やがて夫妻は次の子供がどうしても欲しくなったが、また癌を抱えた子が生れるかと思うと、どうしても普通の出産に踏み切れなかった。
ある名医に相談したところ、遺伝させずに生む方法があるという。その方法とは、着床前遺伝子診断であって、体外受精を行い、この癌のDNAの無い受精卵のみを選び出して子宮に戻すことのそうだ。この方法で夫妻は無事健康な第二子を得たそうである。


3.ニューヨーク大学の某教授は、それぞれ、豊かで上品な家庭と貧乏で下品な家庭に養子に出された一卵性双生児(女子)を10年に亘って観察した。その結果、二人とも、性格、学力、癖などが同じであるということから、遺伝の影響の方が環境よりも子供に大きな影響を与えるという結論を出したそうだ。


これは、70年ほど前、私が中学生でメンデルの法則を習った時に、先生が強調し、目を輝かせて聞いた「形質の発現には、遺伝のほうが環境に優先する」という原則が、人間で確認されたということだろうか?