ドラマ:王様の心臓

録画(4月6日、4ch)した「王様の心臓」を視た。シェイクスピアの暗い「リヤ王」を日本の現在版に、明るくユーモラスに翻案したもののようで、主役が西田敏行でとても面白かった。

リヤ王に当たるのは、小さな八百屋から始めて不眠不休で働き、今も拡大路線を走る中規模スーパー‘ハジメ屋’の社長(西田敏行演ずる)である。糟糠の妻を亡くし、今は豪邸に一人住いの身。

別居中の娘が3人いる。長女ゆりは独身で、父の投資を受けてある店の社長をしている。次女あやめは歯科医の妻で二人の小さい男の子の母親。三女のさくらは、父の反対を押し切って大学を辞め、劇団に入り将来は演出家になるのが夢。現在は、舞台装置に取り組み、劇団の寮住い。照明担当の誠実な恋人がいる。時々父を心配して電話する心底は孝行娘。


ある日、社長は持病の狭心症の発作で入院した。一応退院はしたものの医者の勧めで休暇をとることにして、娘たちを自宅に呼んだ。登記済み権利書を前にして、これから一緒に暮らす娘に全財産を与えると言う。長女と次女は、“一緒に暮らしたい“と言うが、三女は、寮住いで地方公演もあり、できないと断る。社長は「親よりも芝居の方が大事な不幸娘は、出て行け」と怒り、勘当状態になる。


社長は試しに、先ず長女のマンションに泊まりに行く。そこで知った現実は、ホストとの交際、多額の赤字。それを注意すると、冷たく居直られた。怒ってそこを出て、次女の家へ行く。夜中に目が覚め、ふと話し声が聞こえる居間を覗くと、夫婦で父から金を引き出す相談をしている。


それで、その家も飛び出して、何も持たずに夜の東京を彷徨し、創業の原点である新宿スーパー1号店に入る。三女は、それを知って、1号店へ駆けつけ、劇団の明日の公演「リヤ王」の切符を渡し、是非見に来て欲しいと懇願する。芝居小屋では、父と長女、次女が同席して観客となる。リヤ王を演ずるのは、西田。娘役も皆同じ女優という、何とも不思議な世界が現れる。


なお、この休暇中に、後を預かった専務に放漫経営の責任を取って退任するように迫られる。

公演が終わった後、三女のアドバイスに従って、社長は入院して臨終寸前の涙の場面を演ずる。長女、次女は揃って悔い改めることを誓う。社長は専務に電話で退任を伝え、代わりに1号店で1店員として1からやり直すと言う。1店員として働いている最中に倒れる。
だが悲劇の感じはない。三女は生きているもの。


原作「リヤ王」の暗さはない。しかし‘金というか財産と親子’の関係をめぐる内容は、原作にほぼ忠実である。楽しく鑑賞できた。
次回作の「ロミオとジュリエット」が待たれる。