日本の家電産業は復活できるか

月曜日(4月2日)の夜に録画した、12chのカンブリア宮殿(ホスト:村上龍氏)を視る。この日のゲストはソニー最高顧問の出井伸之氏。テーマは「日本の家電産業は復活できるか」。

先ず初めに、この会場に集まった日本の家電メーカで働く若手社員100人に、「自分の会社または部署は活気に満ちていると思う人」をボタン押しで尋ねたら、yesは34人だった。出井氏のコメントは「少ない気がする。こんなもんですかね。日本は元気か?と尋ねても、同じ答えでないか」
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次に出井氏の略歴が紹介された。1960年に入社。41歳のとき文科系出身だが、オーディオ不振の中で、オーディオ開発事業部長に任じられ、1982年に世界初のCDプレイヤーを開発。その後、コンピュータ開発部門を任せられたが、当時日本はワープロが全盛だったので、撤退した。1995年に、常務になったばかりの時、14人抜きで社長に抜擢された。当時ソニーは映画、音楽部門も持っていたので、ソフトとハードが分かる人として社長に選ばれたといわれる。

その後、AVとITを融合したPS2やVAIOなどのヒット商品を出し、株価も2千円から1万6千円に急上昇したが、2003年に赤字を計上したため、株価暴落、ソニーショックが起こって、2005年に退任した。この10年間の特に後半に、インターネットや携帯電話の普及、アジア勢の台頭などがあり、ソニー本体が技術的、社会的に出遅れたのが原因だという。
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{自前主義にこだわると危険なのでないか?}
デジタル家電、特に薄型テレビの値崩れが激しい。大手メーカと中小のベンチュア企業製品との品質の差は値段程大きくなくなった。
中小ベンチュア企業は世界各国から安くて、良質の部品を集め海外工場で規格通りに組み立てていれば、安価で品質の良いデジタル家電を作れる時代になった。アナログ製品では、技術者の腕の差が現れるが、デジタル製品では半導体の中に部品が入っているようなものなので、差を出すのが難しい。

{このままでは、国内産業は衰退する}
日本はDRAMで、世界シェアの10%になってしまった。
エルピーダメモリの坂本社長は、日本国内での新工場建設を諦めた。台湾政府が、5年間の法人税免除、関税免除、1千億円近い優遇措置を提案したが、日本では、なんの優遇措置もないので、目下台湾で1兆6千億円の投資計画で工場建設を進めている。

{業界再編が起こるか}
家電業界は10社位がひしめいているが、海外メーカに比べて規模が小さい。家電メーカーは欧州に1社、米州に1社、アジアに1,2社と再編統合されるのでなかろうか。日本の家電メーカーは、このまま行けば衰退し滅亡するしかない。

村上:日本の人口1億人位の市場が居心地がよい。小説の場合、もし人口500万人位だったら、翻訳されるのを意識して書かねばならないが、その必要がない。
出井:電気製品の場合は、国内に安住できない。

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インターネットでの質問:親が就職させたい会社にソニーが上位に来なくなってきた。

出井:親の古い頭にあるのは、ピークを過ぎた碌でもない会社である。しかし、わりに良い子が、親の特にガールフレンドの親の考えを気にする場合がある。
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出井氏は、今ITベンチュア企業フリービット社長の石田宏樹(36歳)ら若手企業家を応援しているという。