アメリカの医療制度

鉛色の空が覆う薄寒い一日。

アメリカには健康保険制度があるような、ないようなことを聞いていて、はっきりしたことが分からなかった。常々疑問に思っていた。実態は次のようになっているようである。

アメリカは「自己責任」が当然とされている国だから、医療保険は民間が運営。保険会社が販売する医療保険の「商品」を個人が選んで購入する仕組みになっている。医療にも「市場原理」が導入されている。
それでも大企業は、従業員に医療保険をかけている。中小企業の従業員はそうはいかない。大企業の従業員でもリストラで職を失うと、保険もなくなる。収入が途絶えて高額の医療保険の「商品」を買うことができず、無保険状態になってしまう。その結果アメリカ国民の内、4700万人が医療保険に未加入となっているという。6人に1人は医療保険に入っていない計算になる。

でも、高齢者と低所得者のための公的な医療保険制度はある。「メディアケア」と「メディアケイド」である。1965年にこの制度ができた。
メディアケアは連邦政府が運営。65歳以上の高齢者と、身体障害者を対象にしている。無料で診察してもらえるが、処方された薬は自費でかわなければならない。
メディケイドは、連邦政府と州政府の共同運営。低所得のための医療保険である。この制度では、収入にならないと敬遠する医師が多く、治療が手遅れになって死亡する事例も少なくないという。
さらに問題なのは、メディアケアに該当しない65歳未満で、メディケイドの対象ほど低所得でない人たちの場合である。これらの人は民間の医療保険会社の保険料が高いため、大量の無保険者になってしまう。

無保険者は、交通事故にあえば、救急車で病院に運ばれる。救急病院は、無保険者でも治療しなければならないことが法律で定められているから、最低限の応急処置になりがちになる。
無保険の患者を治療する病院は、かかった費用が払ってもらえないことが多く、2004年現在、全米の病院が自己負担する医療費総額は54億ドル(6264億円)に達しているといわれる。

病院は払ってもらえない治療費は、他から調達するしかないから、他の患者への治療費で不足分を補おうとする。その結果、医療費は高騰。民間の医療保険会社も、高騰する医療費をカバーするためには、保険料を値上げしなければならない。そうなると、保険に入れない人が一層増加するという悪循環に陥っている。

以上は、「」週刊ポスト:4.13」の池上彰氏による記事からの引用でした。
*         *               *
医療保険に加入していれば、半日待って3分診察というのは無いらしい。商品の種類によっては、自宅に居て、主治医と詳しい電話相談もできるという、到り尽くせりの医療をうけられるようだ。アメリカは、例外もあろうが、命と金が比例する国のようだ。

そういえば、最近オープンした六本木ミドタウン内に、アメリカから進出した超豪華な健康診査施設(診査費用100〜200万円とか)が入居したとテレビで視たような気がする。命も金で買える時代になってきた。


日本の健康保険制度も何時までもつか分からない。