芸人と政治家

そのまんま東氏の宮崎県知事当選について、師匠だったビートたけしが「週刊ポスト:2.9号」で、実にユーモア溢れる、また元弟子を想うエールを送っている。中々こんなユーモラスな文章は書けない、以下に‘さわり‘を抜書きして紹介する。
「今回のそのまんま東の当選は、安倍首相が唱える『再チャレンジ可能な社会の実現』を見事に地で行く話になったよな。
東は離婚を2回して、警察には3回お世話になっているんで、これほど再チャレンジ可能な国はないだろうね。一片のパンを盗んで逮捕されたジャン・ヴァルジャンが脱獄を繰り返した末に改心して市長になったという小説『レ・ミゼラブル』さながらの感動的な転身ぶりだよ。

東は師匠のオイラよりもでっかいことを成し遂げたのかもね。各都道府県の知事は大臣レベルの勲章を貰えるそうだし、オイラなんて前科があるから文化勲章ももらえやしないしな。

東はあのまま芸人を続けているよりも良かったって思うよ。
最近は若手の芸人がどんどん伸びてきているから、あの歳のタレントが仕事を貰うのだって難しいんでね。東がどんな形にせよ知事を辞めても、政治評論家とか大学教授にだってなれるんで、もう一生食いっぱぐれはないしね。(中略)

まさに「風が吹けば桶屋が儲かる」。それにしても、宮崎県民は随分と思い切った選択をしたもんだと思ったよ。オイラなんか、いくら新聞の世論調査で、「優勢だ」って伝えられてたとはいえ、最後はケツから2番目くらいに落ち着くと思っていたからね。
日曜の夜にテレビを見てたら開票直後に「当確」の速報が流れて、思わずソファから滑り落ちたよ。

東が当選して、オイラのところにも各方面から「おめでとうございます。宮崎の談合に一枚かましてください」って、ジャンジャン電話がかかってきて困っているんだけどさ(笑い)。

実は東は今回の出馬を決めた際に、『オフィス北野』を辞めてもらっているんで、オイラとはもう関係がないってことでね。いよいよ出馬するって時に東がオイラに挨拶に来たけど、それっきりで選挙期間中もオイラは何もしてないもの。

それはオイラなりの考えがあって、『芸の世界』と『政治の世界』は相反するものだと思っているから。芸人が政治や政治家に文句をいったり悪態をつくのはいいけど、芸人が自ら政治家をやってはいけないというね。

オイラは政治がいくら変ろうと、どんな世界でも芸人としてやっていく覚悟があるんだよ。共産党政権になれば誰よりも早く赤旗を振るし、北朝鮮みたいな独裁政権になれば「マンセ!」って叫びながら喜び組のおネエチャンと一緒に将軍の前でパンツ一丁で踊りまくる。長いものに喜んで巻かれるというのが芸人根性だからね。

だから政治は芸人なんかを取り込んだらいけないし、ホントは国民も芸人を政治家に選んじゃいけないんだよ。信念を曲げない、公約は守る、信義を裏切らない。政治家に大切な資質はみんな、芸人に欠けてるものばかりで、だからこそ芸人をやっているんだからさ。

東とオイラは、もう生き方が違うんでね。別に縁を切ったってわけじゃないけど、東には「オイラは芸人、お前は政治家。行く方向が違うんだから、師匠と弟子の関係もナシにしよう」っていったんだよ。(中略)

まア、いざ始まると、東は意外とうまくやるんじゃないかって思っているんだけどさ。なんだかんだいっても元芸人だからね。芸の世界なんてのは談合だらけ。東にとちゃ慣れ親しんだ世界なんで、談合しておきながら真剣勝負と見せかけるバランス感覚は持っていると思うよ。マア、みのもんたの「怒り芸」には遠く及ばないけど。(中略)

県知事になった東には、元芸人らしい政治家になってほしいけどさ。4年の任期を全うできるかって?1年持てば上等だよ。まずはお手並み拝見だって」の!ジャン、ジャン!