デフレ脱却後の日本経済

貯まってきた古い雑誌類を処分しようとして、その前に処分予定の雑誌「文芸春秋:2004年新年号」をばらばらめくったら、「『不良債権とデフレ』15年戦争:小林慶一郎(朝日新聞客員論説委員)」という記事が目についた。内容は、今後の日本経済を見通す上で非常に参考になりそうに思えたので、要点を以下に記録して留めることにした。

名目金利がゼロであるために、デフレが起きる。・・・不良債権処理を終結させれば、ゼロ金利を解除でき、デフレを終わらせることができる。その後で、問題になってくるのが、国の財政と国債市場である。・・・経済がデフレを脱却し、景気が本格的に上向いてくれば、企業の資金需要が旺盛になる。金融機関も手持ちの国債を売って、そのお金を企業に貸し出す方が有利になる。すると国債の投売りが発生するリスクが高まり、国債暴落が起こりやすくなるのである。もし、国債暴落が起きれば、国債を大量に保有する生保や銀行などが連鎖破綻し、金利もあがるため企業倒産も続発するだろう。100%を超えるようなハイパーインフレが発生する可能性も高い。国債暴落による恐慌の発生である。
それを防止するためには国債管理を強化する必要がでてくる。・・・国債を日銀が買い支えれば、経済に流通するマネーの量が増えるので、経済はインフレになっていく。・・・その結果、日本経済はかなり高いインフレ(10%以上かもしれない)を数年にわたって我慢しなければならなくなるだろう。しかし、高インフレの持続は、景気回復の代償として甘受するしかない。
このような財政の経路は、アメリカの国債政策が第二次大戦後に辿った経路と同じである。アメリカでは、大恐慌と第二次大戦で巨額の国債が積みあがった。戦後、企業の資金需要が増えるとともに国債暴落リスクが高まったので、連邦準備制度理事会国債を無制限に買い入れる政策をとった。その結果、アメリカ経済は高インフレに悩まされたが、国債暴落とハイパーインフレを防止できたのである。アメリカが国債残高の対GDP比率を正常化したのは、1080年頃であり、大恐慌発生から実に50年が経っていた。
日本もこれから、資本注入と不良債権処理を迅速に実施すれば、民間経済は3年程度でデフレから脱却するだろう。そうなれば、失業も減り、国民生活は明るさを取り戻す。そして残った問題である財政については、国債管理政策を続けながら、数十年というスパンで、正常化を目指すしかないと思われる」

以上の話の通り、この3年間日本経済は進んできたので、小林氏のストーリを信じてもよいと、経済に素人の私は思う。
しかしそうだとすれば、次世代の人々は長く暗いトンネルを通り抜けることを覚悟しなければならない。
なお、今日の朝日新聞の記名記事で、小林氏は、日銀の独立性が大切だと、主張していた。