まだそんなに老いてない:テレビドラマ

昨夜録画したテレビ朝日の「まだそんなに老いていない:山田太一新春ドラマスペッシャル」を視た。脚本がよくできている。定年(60歳)前後の暇な若老人の揺れる心を巧みに描いているのに感服した。老いても、こういう胸のときめく機会があったらなあと思う反面、面倒臭いとも思う。以上だけでは何のことか分からないので、下にこの番組のHPに出ていたストーリー前半に、若干加筆したものを書き残すことにする。舞台は、横浜市都筑区で、池のある公園の風景が美しい。
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塚原浩司(中村雅俊)は消防官として30数年勤めてきたが、消火活動中に足を骨折し、現在リハビリのため休職中。
ある日の夕方、家の近所を散歩していた浩司は、近道がないかと一区画の更地の裏手に回ろうとした。すると「ピーーーーッ」と鋭い音がする。見ると、老人(大滝秀治)が自分の首にぶらさげたホイッスルを顔を赤くして吹いている。それも、浩司のほうを厳しく睨みながら。
どうやら浩司は下着泥棒に間違われたらしい。パトカーも来て、人だかりもでき、浩司は必死に潔白を主張する。
そんな騒動を人ごみの中から、見ている男がいた。小野寺信治(岸部一徳)である。
数日後、ぼんやりと喫茶店で時を過ごす浩司に、小野寺が声をかけてくる。
「いいですか?ここ掛けても」。
知らない顔に戸惑う浩司に、小野寺は好き勝手に定年後の暇な生活についてなど話す。そして、思わぬことを言い始めた。
「偶然耳にしたんですが、あなたのことをものすごく格好いいってしゃべっている女性がいる。年増で、実にいい女。隣の駅の駅ビルの4階『リリィ』という店にいるから、まあ見てきなさい」。
思いがけない話に浩司は「行きませんよ」と一笑する。
しかし、そんなことを言われて気にならないはずはない。好奇心もあって、駅ビルに訪れようとする浩司だが、『リリィ』は女性のランジェリーショップ。男性が入るには勇気が必要な店だった。
ためらっている浩司に、小野寺が言っていたらしい店の女性(余貴美子)が「どうぞ、ご覧になるだけでも」と声をかけてきた。
妻(原田美枝子)の入院中の下着を代わりに買いに来た、とドギマギしながら言い訳のように言う浩司に、その女性は親しみをこめた対応をしてくれた。
会話のやり取りでは信治が言ったような「浩司を気に入っているようなそぶり」は見られない。しかし上品で魅力的な彼女に、浩司はなんとなく胸のときめきを覚えるのだった。
数日後、偶然浩司の住む駅のそばで、2人は再会する。雑談を交わし、去ろうとする彼女がふと思いついたように引き返し、こういった。
「コーヒーでも、いかがですか」
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以後、浩司は妻に隠れて度々彼女とコーヒー店で会う。
4度目の時に、浩司は「次は食事でも」とどぎまぎしながら切り出す。
彼女は応諾する。
実は、彼女は親友と浮気をした小野寺に怒って、実家に帰って『リリイ』で働いていた小野寺の妻なのだ。そして小野寺に、彼女を気に入っている松葉杖をついている男がいると云われていたのだ。
妻の行動を監視していた小野寺が浩司の妻に情勢を知らせる。共にときめきを感じていた二人だが、結局食事は一緒にしないで、さわやかに別れることになる。