日本的資本主義

少し風邪気味のため、家の中でテレビを視たりして、静かに過ごす。「ウオールストリートの風」を読み終わる。著者の寺澤芳男氏は元野村證券副社長で、通算16年間米国駐在。日米経済摩擦が激しかったころ、テレビで分かり易く、米国と日本の考え方の違いを述べていたのが、印象的だった。この本は、あのブラックマンデーと呼ばれる株大暴落の日1987年10月19日の翌年4月に、刊行された単行本を文庫化したもののそうである。即ち日本のバブルが弾ける前の、日本がアメリカを追い越して、ドル時価では世界一のリッチさを誇って、いい気になっていた当時に警告のために書かれたもののようである。その点で興味深い。

特に印象に残った内容を以下に書き留める。
「ウオ−ル街にいると、よかれあしかれこれが『資本主義の本家』という思いがする。借り物ではない資本主義、そのものズバリの資本主義である。それに反して、どうも日本の資本主義は、『日本の』すなわちジャパニーズ資本主義のような気がしてならない。
20歳を過ぎてもう一人前の大人なのに、教育ママがぴったりと横に付き、いつもおせっかいをする。朝はおみおつけの匂い、夏の夜は蚊取り線香の匂いがする。そういう日本好みの資本主義。

急激な変化を好まず、過激な対立を避け、敗北者を出さず、限りなくすべてに近い国民が中産、中流意識の中で穏やかに暮らす。もしこれが、いまの日本であるとしたら、まことに反資本主義的姿といわなければならない。絵に描いたような資本主義は、まったく別の現象を生むはずだから。
アメリカ人が日本にきてイライラするのは、日本はアメリカと同じような資本主義を採用しているものだと勝手に思い込んでいるからである。もし、アメリカ人が、日本は日本流の非常にユニークな、ひょっとしたら社会主義よりももっと社会主義的な資本主義を採用していると、初めから正しく教えられてきたら、あんなにイライラはしないだろうと思う。
これからは、日本の資本主義はアメリカと同じ資本主義だなどと説明して、ますます誤解の溝を深めるようなことはお互いにやめたらどうか」

これは当っている。現に2年ほど前のホリエモン堀江貴文氏)が華やかだった時に、日本の有力なオピニオンリーダーである、田原総一郎氏がアメリカに飛んで、「会社の持ち主は誰か?」などと、テレビカメラの前で臆面もなく、質問していた姿が鮮明に思い浮かぶ。

日本的資本主義もよいが、豊かさが、見せ掛けでも、アメリカを追い越して、しかもアメリカに国を守って貰っているのでは具合悪いのでなかろうか。