不二家と食の安全

食品の賞味期限や消費期限とかには今まで無関心だった。それは、メーカを信頼していたからだと思う。ところが、戦前から私たちになじみの深い名門洋菓子店である不二家が、『袋の中に蛾の幼虫が入っている』というクレームに発して、期限切れ原料問題によって、全国のデパートやスーパーから製品を撤収されて、さらにはフランチャイズ(FC)店の棚は空になるなど社会問題になっている。藤井林太郎社長は辞任し、後任は、一連の事件と無関係とみられる創業家一族ではない桜井康文氏と決まったようである。

この騒動の原因は、新旧創業家社長の間で起こったお家騒動にあるようである。不二家は故・藤井林右衛門氏が1910年に創業し、その後、息子たちが順に社長、会長の職に就いてきた。89年に林右衛門氏の5男の長男・俊一氏が5代目社長に就任し、孫の代に世代交代した。ところが任期半ばの95年の決算で経常赤字に転落することが明らかになると、俊一氏が解任され、事実上藤井一族から捨てられた。代わりに林右衛門氏の次男の長男・林太郎氏(今回辞任した社長)が社長に就任した。林太郎氏は、ひたすら赤字削減のために邁進し、大規模な合理化に着手した。96年には2233人いた従業員は今では約1000人と半減しているそうだ。そして林太郎社長時代の12年間で売上げが40%近くも落ち込んでいるという。
合理化を急ぐあまり“食の安全”を軽視したつけが回ってきたのだろう。
セイコーインスツル(SII)の服部家の場合と同様、もはや創業者一族が経営する時代ではなくなってきているのだ。