「ローマ人の物語」完結

ローマ人の物語』全15巻がついに完成したそうである。単行本と文庫本あわせて計775万部が売れた大ベストセラーのそうである。私は五賢帝時代の安定期までしか読んでいない。衰亡期には、興隆期ほどの興味がなかったから。その上、全部図書館で借りて読んだので、1冊も買っていない。したがって上記の売上げには全く貢献していない。

この完成を記念して「文芸春秋:2月号」では、著者の塩野七生氏、休職外務事務官の佐藤優氏および国際日本文化研究センター助教授の池内恵氏による3者鼎談が行われた。内容は多岐に渉っているので、整理がむつかしいので、特に印象深かった点を抜く書きしてみた。

「ギボンの『ローマ帝国衰亡史』など、ローマ史はすでに浜の真砂ほど書かれているが、大半は帝国の衰亡に力点をおいた“衰亡史観”にたつたものばかり」

「私はヘソ曲がりだから、大勢と反対の観点からローマ史をかいてみたかっただけ。その方が面白い。何かしようと思ったら、面白いと思わなければダメでしょう」


「自由と平和がローマの両輪だった。・・・ローマ帝国は蛮族さえも、兵役の義務を果たせば、ローマ市民として取り入れる懐の深さがあった」
「ローマでは、ギリシアから連綿として継承された人間中心とでもいうような寛容な社会が、キリスト教という神の支配に服する人間集団が増加していくことで内側から変質して溶解していく」

「あれほど強大な軍事力を持ったローマが衰亡したのは、蛮族との戦闘ではなく、宗教という内なる敵との闘いによってだった。一神教というものは一人の人間の中や、一つの民族の中に根付いてしまうと、それを根底から取り去ることは不可能です。それくらい一神教の毒は強い」

一神教的な発想が強くなり、自分を絶対的に正しいとする発想に陥ると、相手の内在的論理など推察できなくなる」