砂に消えた130億ドル


曇天だが、この季節にしては暖かいので、夕方近所をぶらぶら散歩する。家々の庭の紅葉、黄葉が美しい。
写真は昨年の今頃に撮った鶴岡八幡宮裏山の紅葉である。


「外交敗戦:130億ドルは砂に消えた」を読み終わる。著者の手嶋龍一氏は、湾岸戦争の時に、自衛隊を海外に派遣しなかったために、国際社会から‘蔑み’を受けたと述べている。当時ワシントンで記者として第一線で活躍していた著者がそのように感ずる気持ちはよく分かる。だが、当時日本国内で呑気に過ごしていた私には、‘蔑み’を受けたという実感はない。100億ドルもの金をこの戦争に拠出したのに対して、全く感謝の意を表しないクエイトに対して怒りを覚えたくらいである。

本書には、この拠出金を巡る日米交渉について、臨場感あふれるやりとりが詳しく述べられている。拠出額は、時の橋本蔵相とブレイディ財務長官との二人だけの腹芸会談(記録を残さない)によって決まったという。外務省は全く蚊帳の外だった。そのため、ドル建てか、他の多国籍軍参加国にも支払われるのかについて、後に大問題になった。著者は、二元外交の弊害を力説している。このような悪夢を経験したのも一因で、橋本龍太郎氏は総理になってから、中央省庁改革などの内閣機能の強化に乗り出したのであろう。これは、小泉、安倍内閣で実現しつつある。