真珠ができる謎を追って


先日のクラス会で学友渡部君から贈られた「アメリカ大学研究生活50年」を、昼から読み始めて夢中になって、今やっと読み終えた。

バイオミネラリゼーション(生鉱物形成学)という一般には聞き慣れないが、生物にとって重要な学問分野の研究に生涯を捧げた渡部君の研究生活自伝である。生鉱物形成学とは、分かりやすくいえば、あこや貝(生物)が真珠や貝殻(鉱物)を作ったり、人間など哺乳類(生物)の歯や耳石(鉱物)ができる過程などを研究する学問のようである。

戦後、1981年代までは、電子顕微鏡(透過型および走査型)を使って組織学的にどのような種類があるかを解明してきた。80年代はそれを一歩進めて、石灰化に関与する酵素類の生理学的、細胞組織学的研究を始めとして、カルシウムや有機基質の組織内輸送過程を放射性同位元素を用いて解明したり、分画・抽出した有機質要素の抗体を利用して、免疫細胞学的に基質の細胞諸器官内の局在を究めるという方向に進んだとのことである。すなわち周辺科学・技術の進展に合わせて、それらを利用して研究が進められているらしい。
要するに、著者は、あの美しい真珠ができる謎に魅せられて、少年のように、その謎解きの夢を追って研究を続けてきたようである。

著者は私と同年配なので、この本の逐年的記述を読みながら、その頃私はどうだった?と自己反省しながら興味深く読み終えた。また学会での世界各国への旅物語も面白く読めた。