鎌倉夫人

コーナン・ホームセンターへ家内の運転で行く。10時ちょっと過ぎと、早く来たせいか駐車が楽だった。さらりとした秋日和、半袖の客が多いが、私は寒さがりのため長袖の上にカーディガンを着ての出で立ち。

今日の主な目的は、除草剤を芝生に撒くときに使う防塵メガネを買うこと。
春の花粉症のシーズンにはコンビニなどでよく見かけるが、その時期を外すと無い。今日もあるかどうか自信がなかったが一応行ってみることにした。そしたらあった。ここでは日用品が殆ど凡て揃う。便利になったものである。
しかしこのような薄利多売の大型店が全国的に増えては、デフレは中々収まるまいと思う。今のデフレは、卸問屋などによる中間マージンが無くなったことと、中国などから低い労賃での製品が輸入されることによるものと思われる。
帰り際甘い香りに誘われてその方を見たら、黄色い小花をつけた金木犀の苗木が多数並んでいた。その中の1本を買って、帰宅後庭に植えた。今後が楽しみである。



話は飛ぶが、最近「鎌倉夫人:杉本晴子著」を読んだ。同じ題名の小説は、昭和40〜41年(1065〜66年)に週刊新潮に連載された立原正秋の作品他色々とあるようである。古都鎌倉に住む、仕合わせで雅やかな令夫人の生活が匂って、ほのぼのとした憧れを抱かせるのでなかろうか。私もその感じで年甲斐もなく、題名たけでamazonから取り寄せた次第である。
杉本氏のこの作品は、月刊「かまくら春秋」に1996〜99年に「星月夜」というタイトルで連載されたものを、単行本化するに当たって補筆改題したものとのことである。商売を考えると、「鎌倉夫人」は正解だったようである。



内容はダブル不倫がテーマで、期待に反してどちらかというと、暗く悲劇的である。以下、荒筋を述べる。
ヒロイン紘子は、鎌倉は佐助の宏壮な屋敷に住む三代目社長沢木孝之と見合い結婚して20年になり、雛子という一女がいる。同居する舅、姑は古風な日本的意識を頑なまでに持ち続けている。
孝之は女遊びが激しく、ある夜「ある女に男の子を生ませていた。来春、小学校にあがるにあたって認知することにしたから、承知しておいて呉れ。おやじ達は前から知っており、長男誕生で沢木家も安泰だとよろこんでいる」と切り出された。(皇太子浩宮もこのように勇ましかったら、天皇家も安泰であろうが。これは筋の悪い冗談!!取り消し!!)

以後、紘子の苦しみが始まる。一睡もしないで、家を出て由比ガ浜まで歩く。かってこの海で一緒に過ごし、軽いキスを交わしたたけの初恋の高田秋司の姿がよみがえってきた。お互いの気持ちをわかりあいながらも、言葉としてたしかめ合うことをせず、秋司はアメリカへ旅立ってしまった。以後、現地の女性と結婚したとの知らせがあったまま、消息は分からない。

ある日、秋司の友人で20年前に何度も一緒に遊んだことのある谷崎圭とばったり会った。圭は医者で妻と別居中である。その圭が秋司の消息を調べて呉れるという。そんなこんなで、何度か会ううちに二人は深い関係に陥る。最後に末期がんで鎌倉に帰ってきた秋司を献身的に看病するが、その甲斐なく逝ってしまう。その間圭は海外へ行ってしまう。

鎌倉の風物が散りばめられて、自然の情緒は豊かであるが、43歳の紘子の心は可哀想にうつろである。彼女に男の子が生まれていれば、別の途があったかもしれない。