フリータと文化

私が社会に出た敗戦直後のころ(1947年、昭和22年)は、食べる(せいぜい薩摩芋)というか、生命を維持するのに精一杯で、どんな職業が自分に向いているかなど考えも及ばなかった。どんな職業にも飛びついたものだ。
当然フリータなる言葉はなく、それに類する若者は殆どいなかった筈である。所謂正規の職業につけない者は、闇屋などをやって命をつないでいたものだ。

今日夕方偶々テレビを付けたら、BSフジで竹中直人がホストで「PS45:理想の大人の生活とは?」のタイトルで、ファッション・デザイナー山本耀司氏をゲストに迎えて、大人の番組が放映されていた。
面白いので、つい引きずり込まれて最後まで視てしまった。

住む世界が違うので山本耀司氏を今日始めて知ったのであるが、長身で黒い顎鬚を生やしたハンサムな中年男(62歳)。空手の道世界連盟会長とのことである。

世の中で一番怖いのは母親と公言する、典型的なマザコンで、離婚暦があるらしく、今独身かどうかは聞き漏らした。中高生の時は良い子になろうとして真面目に勉強し、最高の大学に入って母を喜ばそうと努力したそうだ。それで慶応に入ったが、良い家からの子弟が多く就職で差をつけられ、馬鹿馬鹿しくなって就職はしないと決心したとのことである。それで今の言葉でのフリ−タになった。

遊んでばかりいても仕方ないので、母がやっている洋裁屋を手伝ったら、文化服装学院で本格的に服装デザインの勉強をするよう命ぜられ、以後のめり込んだ。

竹中と空手の型を演じたが、気合が入り過ぎてあやふく竹中が怪我をする所だった。ギターを弾きながら歌ったが、プロ級のようだ。相当な文化人であるとお見受けした。

日本の若者のファッションは世界一と言っていた。だが何故、女の子ができるだけ肌を露出したがっているのか訳が分からないとも言っていた。

今後の目標としては、「映画監督をしてみたい」と言ったら、竹中が「どんな端役でもいいから、その時は是非使って欲しい」とみっともない位懇願していた。

「物作りには偶然が大事だ」とつぶやいていたので、ファッションも物づくりなのかと改めて気付いた次第である。

昔はウイスキーなど酒をぼんぼん飲んでいたが、3年前に体を壊して以来止めていた。最近また飲み始めたそうである。酔っ払うと、「マンションを買ってやる」などと、大法螺つきのおつさんになる悪い癖があるらしい。

どうもこの贅沢な番組の大口スポンサーはサントリーのようであることに、最後の所で気付いた。

サントリーさん良い番組有難う。だが私はお酒が飲めません。