官僚支配内閣

gladson2009-01-25

BBC記者の目に晒された「官僚支配」
 しかし、そのことは日本に多くのダメージを与えていないようだ。「日本株式会社」は力強く進んでいる。日本は世界第2の経済大国だ、と続く。注意を要するのは、その次のフレーズである。首相が変わっても日本がダメージを受けないその理由は、実は「政治家は日本では問題ではない」。日本は「官僚によって動かされている」からだ。

 ホッグ記者は当初、「日本は官僚によって動かされている」というような言説に懐疑的だったが、あることをきっかけに確信するに至った。それは福田前首相にインタビューを申し込んだときである。官僚は首相が「ヘマをやらかす」ことを恐れ、インタビューを避けようとしたが、数日かかってなんとか実現した。当日は部屋に入ると官僚が多数待ち構えていた。福田首相とのインタビューのテーマは「環境問題」であったが、官僚は、インタビューが「台本通りに運ばぬこと」を心配し、ある細工をしたのである。その細工とは福田首相に言わせたい科白を「テレプロンプター」で映し出すことであった。官僚は「言わせたいこと」を書き出し、それを「テレプロンプター」という文字を1行ずつ拡大する装置に置いた、と記者は書いている。ホッグ記者は慇懃に不自然さを指摘したものの、官僚は相手にしなかった。

"Three, two、one, cue PM."
 福田首相が入室しインタビューが始まる。補助者(官僚)がホッグ記者の背後から身振りを始め、そしてこう叫んだ。「3,2,1、さあ、首相」(Three, two、one, cue PM.)。そうすると、その哀れな男はテレプロンプターから読み始めたのである。「その哀れな男」(The poor man)とは、我らが福田前首相のことである。

 ホッグ記者にはこの日の「哀れな男」が「かいらい」(puppet)のように見えたのだが、眼の前にいるのは知的で有能な政治家であり、それらのことがその日の体験を一層憂鬱にさせたと書いている。記事は、福田前首相の「置き換え」(replacement)である麻生首相も、「あまり長くないかもしれない」と結んで終わっている。

 私はこの記事を読んでガッカリしました。官僚が首相を意のままに操ろうとする模様がリアルに手に取るように描写されており、実態を知ったという意味では大変勉強になったというものの、世界中がこの事実を知るところとなったからです。
日本人の私ですらびっくり仰天する内容―政治の舞台裏が、政治家と官僚との力関係が、2008年9月27日付で、BBCのwebnewsに掲載され、世界中の人々の目に晒されることとなりました。これは日本の「恥」であり、日本の首相の「権威」は地に墜ちたというべきではないでしょうか。

 これまでも「官僚支配」については、カレル・ヴァン・ウォルフレンなどによって書かれてきたと思いますが、この度の影響の大きさはまったく出版物の比ではありません。日本の首相がこの報道を知らない、あるいは国際社会でこの事実に頬被りをして行動することは、「裸の王様」に等しいものと危惧します。首相(政治家)の「質」が問われています。

 以上がアメリカと余りにも違う我が国の真実であり、前途には重いものがあります。しかし、悪いことばかりではありません。為政者にとっては「不都合な真実」でも、立場を変えれば有益な情報になるからです。
では、「今後どうすれば良いのか?」ということですが、それを「市民記者」の一人として考えていきたいと思っています。

(JANJAN21年1月20日より引用)