人体 失敗の進化史

1月29日(火)小雨
22℃、35%(就寝前加湿)、24.5℃セット
4℃(朝外気温)、8℃(朝室温);6℃(外気温)(14.00)


しとしとと小雨が降る陰鬱な冬日


遠藤秀紀著「人体 失敗の進化史:光文社新書2006年発行」を読む。

動物解剖学者である著者は、ヒトへの進化を設計変更という立場から説明している。人体の部品の話が主で、この手の本にしては比較的親しみ易い。以下抜書きする。


魚の心臓は鰓の後方腹側にある赤黒い三角山の臓器のそうだ。

ヒトは骨があるから立っていることができる。骨はリン酸カルシウウムでできている。太古の魚にとって、生きていくのに必要なリン酸とカルシウウムをどう保持するかは大問題だった。リン酸とカルシウウム。両ミネラルの需給関係の難しさを一挙に解消する方法として、私たちの祖先は身体のどこかにリン酸カルシウウムを貯蔵する場所を備えたのかもしれない。
リン酸カルシウウムが蓄積することと、骨が今のような機能的な形を備えることとの間には、かなりのギャップがある。
このように進化の当初の“狙い”と最終的に出来上がったものの役割が異なることは、身体の歴史としては珍しい出来事ではない。むしろ進化の常道とすらいえる。

哺乳類の耳小骨は爬虫類の顎の一部なのである。
ヒトの手足は、シーラカンスの骨付き鰭が進化したものらしい。

ヒトの土踏まずは、二足歩行に必須な巧妙な重量配分機構である。

二本足で歩くための殿筋群。内臓重量や腹圧を受けとめる下腹部。狭いながらもバランスをとる足底。精巧な母指対向性。巨大な中枢神経。高度な思考を分担する大脳。少ない赤ん坊を確実に残す繁殖戦略。これらの設計変更は、ヒトをヒトたらしめる見事なまでの意匠だ。

しかし著者は、核兵器を生み出し、地球環境を破壊しつつあるヒトは、自分自身が行き詰まった「失敗作」ととらえている。