戦後レジームからの脱却

今日も真夏日というのに、気象庁は梅雨明けを宣言しない。なんとなく、ちぐはぐな感じである。昼飯の支度をしながら、家内に「暑い、寒いのない、静かなあの世に行きたい」とつい呟いたら、「そんなこと言いながら長生きしたいんでしょう」と、からかわれた。生きていても、たいした楽しみも残っていないのに、人は何故死にたくないのだろう?私の場合、おそらく“近未来の世の中がどうなるのか知りたい”のだろう。つまり好奇心で生きているようなものだ。

参議院選投票日(29日)が迫ってきた。マスコミは皆、与党の苦戦を伝えている。自民党の獲得議席数は40前後と予測する向きもある。


自民党の中からも、公然と安倍総理を批判する声がでてきた。例えば「週刊文春:8月2日号」の「再び『空気』に呑み込まれる日本:安倍に『改革』を担う資格はあるか」というタイトルでの猪瀬直樹氏との対談で、
石破(元防衛庁長官)「安倍総理は、集団的自衛権の行使を認め、9条をふくめた憲法の改正を目指すなど『戦後レジームからの脱却』を政治課題として掲げています。私は安倍さんに、戦争を経験していない世代初の総理としての認識を、予算委員会で問うたことがあるのです。日中戦争から敗戦に至る過程で日本は何を間違えたのか、総理がどのような見解を持っているのかを知りたかった。しかし、総理からは、必ずしも得心の行く答えをいただくことはできなかた。
その認識なくしては、あの戦争に突入した時と同じ間違いを犯しかねない、という気がしてなりません」
猪瀬「(略)戦後は『軍国主義』とみんなひっくるめて切捨て、思考停止してしまった」
石破「『空気』で批判される、ということは、戦前も戦後も変っていないのではないかと思うのです(略)」
猪瀬「軍事だけでなく、あらゆる分野で思考停止による空白状態が生まれてきている気がする」
石破「安倍総理に、『集団的自衛権を認めるとはどういうことか』とも聞きました。それは日米関係を根本から見直すことですよね、と。今の日米関係は、あえて端的に言ってしまえば、日本は集団的自衛権を使えないので、その代わりに、どうぞ日本の基地を自由にお使い下さい、ということです。集団的自衛権を認めるということは、これまでのように『義務』として米軍を受け入れるということではなく、日本が主権国家として自ら防衛戦略を考えていくことなのです。しかし、総理からは集団的自衛権を認めることが日米関係を根本的に変えることになる、という明確なメセージが十分に発せられていないように思うのです」
猪瀬「安倍さんは『美しい国へ』で、日本とアメリカが対等になると言っていますよね」
石破「対等というか、論理的には、集団自衛権を認めるから米軍を駐留させる『義務』を負わない、ということになるはずなんですよ。(略)今発せられるべきなのは、戦後レジームから脱却して、主権独立国家として歩むとはいかなることか、それがいかに厳しいことか、そしてそれにどう立ち向うのか、というメッセージなのです」
猪瀬「(略)色々と変えていくに時には葛藤があるものです。むしろ、そのなかで、主権国家としての日本が世界でどういった役割を果たすべきか、という議論が、歴史意識として学者や文化人から出てこないのが問題だと思うんです」
石破「だから過去と同じ間違いをやりかねないのですよ。今も盛んに言われていますよね。北朝鮮許すまじという大合唱や中国脅威論。それは情緒の世界であって論理の世界ではないんですよ。(略)」
猪瀬「(略)日本はヨーロッパ以外で近代が成立した唯一の国。江戸時代から養われた官僚機構が明治時代に西欧文化の受け皿になった。しかし。清貧の時代を過ぎると、官僚機構は腐敗しました」
石破「(略)全体的な視野に立ってモノを言う人は敬遠されがちなんです」
猪瀬「だから道路公団社会保険庁のように、ガバナンスがなくなって関東軍のように暴走する出先機関が出現してしまうんです」
石破「(略)本来あるべき文民統制というのは、国民に対して直接責任を負う政治家が、事の本質を自ら正確に理解することから始まるのです。それなくして、政治はリスクの負いようも責任のとりようもない。社会保険庁の問題にしたって、解体して民営化するとピシャリと言えばよかったのに、実際に掛け金を払っていない人にまで年金を払うのか、ととられかねないニュアンスのことを最初に言うから、反感を買ってしまう。政府に問われるべきなのは、初動の危機対応・危機管理の体制なのです。戦後レジームからの脱却という課題はきわめて重要です。しかし、確かな舵取りをするためには正確な歴史認識が必要であるということを、政権担当者は肝に銘じて欲しいと切に思います」


以上の対談で、何故国民、いや私が、安倍総理がいう「戦後レジームからの脱却という」美しい言葉に、もやもやしたものを感じているのか、その訳が少しハッキリした。脱却した後の日本の姿がどうなっているのか、それまで長生きして知りたいものだ。