良い環境を守る住民運動

現在の地に移り住んで約40年になる。丁度高度成長期の真っ只中で、会社からの融資を条件に5年以内に社宅を出るよう云い渡された。当時は今流行のマンションというものは出始めで目ぼしいものは無かった。土地を買ってその上にマイホームを建てる他なかった。今思えば、結果的にそれがよかった

当時偶々新聞広告を見ていたら、ここの分譲地の広告が大きく出ていた。名の知れた大手の業者のようなので、騙すことはないだろうと信頼して、家内とオースチンで下見に行った。ブルトーザが砂煙をあげ、轟音を響かせていた。近くに商店らしいものはなく、とても人の住める環境とは思えなかった。しかし5年後に住めばよいことだしと思いながら、将来小さなスーパーが出来るという話を頼りにして一区画の購入を決めた。
分譲地のはしりの頃のせいか、おおらかで一区画が80〜100坪で、殆ど全部の長辺が南向き雛壇式という今考えれば贅沢な造りである。全体で約2000区画程度のかなり大きい分譲地である。

住み始めた当時は、櫛の歯が抜けたように、ぼつぼつと家が建っている程度だったが、何時の間にか半分位埋まった頃、自治会ができて、風致地区としての緑の良い環境を維持する目的で、詳細は省くが、
「原則として、一区画内住宅一棟とする。土地一区画とは、50坪以上とする」旨の申し合わせ事項が決められた。

この申し合わせは暫くの間守られていたが、やがて住民の新陳代謝が起こり、申し合わせ事項は空文化しつつある。そして一区画に2棟が建つ所があちこちに出てきた。その度に反対運動が起こったようだが、法律違反ではないので、建築基準法違反でないかぎり自治会としてもどうしようもなかったようだ。このような2棟住宅は我が家から離れていたので、余り気にしていなかった。

一昨年だったか、この分譲地の初期から住民だった近所のSさんが永い闘病の末、地方に住む娘さんの所へひっそりと引越しされた。挨拶もなしに。いつの間にか、建物は取り壊され、暫くの間空地だったが、昨年暮れに突然郵便受けにちらしが入っていた。それによると、某業者Aが、Sさん宅跡地に建築の通知として、そこに2棟建てるという。収まらないのは、その後ろ(北側)に隣接して住むTさんである。遠くに住むSさんに電話したり、隣家のKさんと相談をしたりして、市役所にも陳情に行ったようだが、最後は、見込みは薄いけれどと云いながら建築反対署名運動をしていた。私も勿論反対の署名をした。


Tさんによると、ミサワホームがSさん宅を割りに高い値で買い取って、建物を除去した後に、自社の名を伏せて業者Aにこっそり1区画2棟を建てさせているという。今までのこの種の家は殆どが業者Aによるものとのことである。Sさん宅跡には2棟が今完工寸前である。

この件で発奮したのか、Tさんは今年度の自治会長(皆さん余りやりたがらない)に立候補して、今会長として活躍し始めておられる。