JALのスッチー

世の中はどんどん変っていく。かっては若い女性の憧れの職業だったスチュワーデス(今は客室乗務員またはスッチーと呼ぶらしい)が、テレビアナンサーにその座を奪われてから久しい。
直接、間接、低賃金国との国際競争に曝される職業は厳しい。



例によって「週間ポスト:3.16号」によると、
経営再建中の日本航空(JAL)に、前代未聞の不祥事が発覚した。客室乗務員(スッチー)ら7000人分の個人情報を事細かに記したリストが外部に流出したことが判明したのだ。

同リストを作成、保管していたのは、最大労組であるJALEIO。リストには、交通事故暦、流産の有無から、「ジャイアンツの投手の彼女」「同棲中」などと恋人との交際内容も記され、さらには信仰する宗教や支持政党まで明記されていたというから驚く。

情報流出の被害者でもあるJALスッチーたちは、どう受け止めているのか。

入社2年目のAさん、国内線がメーンで勤続10年目の中堅・Bさん、同じく中堅で国内線担当のCさん、そして20年近い社歴を誇るベテランDさんの4名が集まり、驚くべき内情を明かした。

C:社内で騒いでいるのは若い子だけ。年次が上にいけばいくほど、”何を今さら“という感じじゃない?
A:流産や死産といったプライベートなことに存在意義があるんですか?
D:私たちは1年間、グループを固定して動くでしょ?家族より一緒にいる時間が長いし、食事をする回数も多い。だから、チーフなりその上の人が各客室乗務員のプライベートを知っておくことは業務のうちだし、すごく大切なの。
流産や死産についていうなら、その乗務員のフライトを決める判断材料になる。次の妊娠は大切だから、過酷なフライトはさせられないでしょ?
C:でも支持政党や宗教は関係ないですよね?
D:実はそれが一番、重要なの。例えば、ある宗教団体の幹部が搭乗される場合、乗務員はその信者で固めるのが基本。それに代議士なら、その方の地元出身か、その政党を支持する乗務員を配置して、接客させる。少なくとも、対立政党の支持者は避ける。これは何もお偉いさんのポイントを稼ぎたいってワケじゃなくて、間違いが起きないためにそうしているの。

A:そういえば、ステイ先でチーフに“彼氏はいくつ? 何している人なの?”と、根堀り葉掘り聞かれたことがありました。組合に情報を漏らしたのは、ひょっとして・・・。

D:直接ではないと思うけど、情報の出所はその可能性もあるうでしょう。というのも、客室乗務員が人事に提出する報告書にチーフら上司が普段の会話から得た情報をメモ書きで添えて提出するの。こうした情報が回り回って今回のリストになったのだと思う。
B:フライトも激務だけど、コスト削減の嵐もキツい。昨年の10月からタクシー送迎の条件が厳しくなって電車帰宅も増えた。給料もカットされて、本当に厳しい。“高給で華やか”っていう世間のイメージからは程遠いのが私たちの実情。
A:私、入社後3ヶ月間の給料が手取りで10万円以下でした。それ以降は16万円に上がりましたけど、都内で一人暮らしできるレベルじゃありません。
B:乗務員の契約制度導入(94年)で全てが変ったよね。前と後じゃ給料は月とスッポン。働かないお局様が年収1500万円とか高級とりで、30歳の働き蟻の年収が500万円と薄給。この差は一生埋まらないのよね。だから、契約前に入ったD先輩が羨ましい。
D:確かに、生活に困ったことないわね。あなたたちは大変ですけど。
C:だからこそ、イイ男を捕まえて寿退社を狙う子が増えちゃう。客室乗務員をやっていると、30歳までにはあらゆるジャンルのリッチマンと合コンできる。医者、代議士、経営者に芸能人、スポーツ選手・・・いまだに神話は健在だから、そこだけが救い。
A:先輩方のお話を聞いていると、私たちの幸せって、結局いい男と結婚することじゃないですか。
B:そんなことないわよ。お客様に喜んでもらえるのが一番、嬉しい。これは本音よ。そのためにも、会社にはもっとしっかりしてもらわないといけないんだけど・・・
A:やっぱり玉の輿に乗るしかないですねエ。