大野晋著「日本語と私」

午後、昨夜録画の「警視庁捜査第一課9係、特別編(テレビ朝日)」を視る。
内容は、華やかなクリスマスイブに、サンタクロース姿の男が高層ビルから転落死した、――この高層ビルにある弁護士事務所を舞台にして、甘い汁を吸い上げる悪徳政治家を、渡瀬恒彦羽田美智子たちの刑事が追うという、例によってたわいないものである。
だが、寒いので久しく夜の外出がない私には、液晶大画面に映るイブの夜景が臨場感に溢れ美しく、懐かしかった。



大野晋著「日本語と私」を途中(高校生活)まで読む。大野氏は、かってインドのタミル語―日本語起源説を唱えて物議をかもしたというか、学会で猛反撥を食らった国語学者学習院大学名誉教授)であるという印象が強い。

この本は、大野氏の自伝のようである。しかも友人、先生たち関係者が実名で書かれているので、知っている名前が出てきて懐かしく読めた。私より5歳年上で、重苦しい昭和期をほぼ同じ想いで過ごしたようである。しかも高校は同じ一高で、私とすれ違いだった。私の知らない一高生活について色々と教えられた。高校時代もなかなかのやり手だったようである。
例えば、国文学会の委員をしていた時、活動資金を捻出するため、先輩である松竹の城戸四郎社長に手紙を書いて、歌舞伎座三等席を毎月20枚、半額で売ってもらい、それを寮で額面よりやや安く売って差額を資金に当てたという。半額の条件は「脚本の何かいい材料があったら連絡する」ということだった。

著者が高校時代に抱いた大きな疑問は、「ひたすらヨーロッパを追いかける、日本とは何であるのか」。おきまりの答えは「日本精神がある」だった。しかし日本精神の内実は空疎だった。天皇の御稜威(ミイツ)、ミソギ、ワビ・サビとは何か。この実体の乏しい日本精神を探るために、万葉集の勉強を始め、大学は国文学科に進んだという。

なお受験勉強についても、有益な体験談を述べている。