リズム

三菱化成生命科学研究所で、発生学の第一線で活躍していた生命科学者の柳澤桂子さんが、原因不明の病に倒れ、苦しい闘病生活を送っておられるという話しを何処かで(NHK?)聞いたか、読んだ覚えがある。 

文芸春秋12月号、新年号に、彼女と玄侑宗久氏(仏教者)の往復書簡が「般若心経 いのちの対話」というタイトルで連載されていた。内容は、神、仏から遺伝子にまでにおよぶ高尚なものであるが、無宗教の私の心を動かす程度のものではなかった。

だだ一箇所にあった(12月号)、柳澤さんの以下の言葉が為になりそうに思えたので、ぼけかかって記憶力が衰えた頭が忘れたときの用心にと思って覚え書きした。



「私の病気は、長い間原因がわからなかったのですが、結局脳内のセロトニンが不足しているので、痛みや痺れが出たり、嘔吐、不整脈などいろいろな症状が出ることがわかりました。これは原因がまだわからない頃のことです。私は毎日腹痛に悩まされていました。ある日、お腹の痛い部分に手を置き、『波阿弥陀仏』と繰り返し唱えてみたのです。かなりの時間唱えていたら、不思議なことに腹痛が軽くなるではありませんか。
これは仏さまの御利益かと思ってすませばよいのに、そこが科学者の悪いところで、今度は『だるまさんが転んだ』と唱え続けたのです。何と、これでも腹痛は軽くなりました。要するにリズムの繰り返しなんだなと思って、リズムというものに興味をもつようになりました。
セロトニンというのは、脳の中にあって、神経の情報を伝達する物質で、エンドルフィンなどとは働きのちがう物質です。抑制性の神経伝達物質で神経を鎮めます。最近になって、どこでもよいから、身体の筋肉をリズミカルに繰り返し動かすと脳の中でセロニトロンが分泌されることがわかりました。
筋肉をリズミカルに動かす簡単な方法は、チュインガムを噛むことです。(中略)
私はすでにセロニトロンの働きを増す薬を服んでいますが、それでも疲れたときなど、軽い腹痛が起こることがあります。そんな時はガムを噛みます。筋肉をリズミカルに動かすことで、こんな重要な物質が出てくるということは不思議でありませんか?」

そう言われてみれば、和太鼓の音や、盆踊り、ダンスのリズムも人の心を爽快にする。