タミフルの大量生産

鳥インフルエンザが変異した新型インフエンザの爆発的大流行の危険が高まっているそうである。「スペインかぜ」のような悲劇の再来も憂慮されている。1918年の「スペインかぜ」では、当時の全人類の半数前後の約6億人がインフルエンザウイルスに感染し、死者2500万人とも4000万人ともという大流行となった。日本でも約2300万人が羅患し、38万人が死亡したとされる。
ヒトは「新型」のウイルスに対して免疫がなく、ワクチンも作りようがない。そうした未知のインフルエンザへの備えとして、殆ど唯一といっていい手段が医薬品「タミフル」である。「タミフル」は、人の体内で大量に増殖したウイルスが細胞から出ていけないようにする効果がある。感染後、早い時期に服用すれば劇的に効くそうだ。

危機に備えて各国は「タミフル」の備蓄を進めているが、その需要を満たすにはコスト以前の問題として大量生産の限界があった。

これまでタミフルの合成は、香辛料であるトウシキミの木の実(八角)を原料としていた。つまり天然物からの抽出に頼っていたから、何億人分もの生産は不可能であった。
柴崎正勝東大教授が、不斉触媒を使って「タミフル」の究極の製造法を確立しようとしている。

以上は、「週刊ポスト」10月6日、13日号の「メタルカラーの時代」より要約しました。